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「なに、訳の分からないことを……」
小声で話しつつも、孝行の耳は隣りの部屋にぴったりと張り付いていた。
1K家具付きマンスリーアパート。
住んだことがある人なら分かるかもしれない。とにかく壁が薄い! 隣りの部屋のテレビの音はもちろん、深夜のラブラブな声も筒抜けなのである。
「か、和久っ! 鼻血! 鼻血! ティッシュ! テイッシュ取って!」
孝行は鼻を押さえながらも壁から耳を離そうとはしなかった。
「はいよ」
僕は呆れながら側にあった、ティッシュの箱を孝行に投げつけた。
「す、すまんな。それにしても最高の生ライブだわ」
「バカ言うなよ。今はイチャついているけど、この間なんか喧嘩して大変だったんだ。悲鳴が聞こえて警察は来るし、やじ馬は集まってくるし」
「へ~っ」
「最近は孝行みたいなスケベ野郎がこの時間になると、隣の窓際で声を聞いてるしさ。ヒソヒソうるさいんだ。とにかくうるさくて眠れないんだって」
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