トラブルアパート

4/9

70886人が本棚に入れています
本棚に追加
/404ページ
「なに、訳の分からないことを……」 小声で話しつつも、孝行の耳は隣りの部屋にぴったりと張り付いていた。 1K家具付きマンスリーアパート。 住んだことがある人なら分かるかもしれない。とにかく壁が薄い! 隣りの部屋のテレビの音はもちろん、深夜のラブラブな声も筒抜けなのである。 「か、和久っ! 鼻血! 鼻血! ティッシュ! テイッシュ取って!」 孝行は鼻を押さえながらも壁から耳を離そうとはしなかった。 「はいよ」 僕は呆れながら側にあった、ティッシュの箱を孝行に投げつけた。 「す、すまんな。それにしても最高の生ライブだわ」 「バカ言うなよ。今はイチャついているけど、この間なんか喧嘩して大変だったんだ。悲鳴が聞こえて警察は来るし、やじ馬は集まってくるし」 「へ~っ」 「最近は孝行みたいなスケベ野郎がこの時間になると、隣の窓際で声を聞いてるしさ。ヒソヒソうるさいんだ。とにかくうるさくて眠れないんだって」
/404ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70886人が本棚に入れています
本棚に追加