1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
『昨日はごめんな。』
「え、なんで?
…体、あるんだ…。」
『今までは、体を見せたく無かったし、知られたく無かったからな。だけど、もうお別れやから』
彼が私をそっと抱きしめた。
ミズカキのある手のひらを私はじっとみる。
「もしかして、河童、なの?」
『そうや、たぶん、もっと凄いもんや、と思っとったやろ?』
「うん。嘘はつけないからね。私は貴方を神様とか、この世の中を創った人の一人かな、とか思ってた。」
『顔とか…みたいか?』
考えて私は首を横に振った。
『懸命やな、俺の事を知るとアンタはきついよ』
実際、頭の中が、真っ白になった。恐怖だった。これ以上、頭に何か詰め込まれたくない、という。
しかし、友だちの顔を知らなくていい、なんて随分、私は冷たい人間だと、思い、言い直そうとした瞬間、また彼がぎゅっと抱き締めた。
『何も言わなくてええよ。分かっとる。昨日は無理に一気に知識を与えたし、未来も覗いた。苦しいやろうな…。
あのな…
俺は必ず帰ってくるよ。』
「いつ?」
『嬉しいか?未来、お前は辛かったやろ?その辛さを全部忘れてしまったら、や』
「早くボケろ、ってこと」
『まぁそうや』
文句をいうまえに彼は早口で何かを言い残した。
意味はゆっくりとまるで思い出すように私に染み渡り、消えていった…。
さようなら、親友…
その日を境に彼は消えた。
最初のコメントを投稿しよう!