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私はその夜、目一杯化粧をした。
キモチワルイくらいに。
そして、本能の赴くままに車を走らせてみた。
予想に反して車は山から離れていく。
街中へといざなわれるように繁華街に入り、ふと、引っ張られた。
小さな駐車場に誂えたようなスペース。
車を止めて外に出るとガヤガヤした街中にでもはっきり分かる道案内が私を呼んだ。
水の匂い。微かな花の匂い。
そう、彼の匂いだ。
盛り場を通り抜けた先に川があった。岸にへばりつくように数件の民家があって、そこに数本の桜。
ヒラヒラ舞い散る。
私はそこに立って空を見上げた。
花びらが散る中に朧な月が浮かぶ。
来たよ。
と私は静かに語りかけた。
月に。
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