ほほえむのなら。

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いつでも、どこでも、誰にでも嫌われ続けた私。 『っ…くっ…ひっ…』 「大丈夫か?」 そんな私が泣いている時、いつも手を差し出してくれたのは貴方だけだった。 私は、そんな彼の温かな手が大好きだった。 前に一度だけ聞いた事がある。 “どうしてあたしに話しかけるの。貴方だってやっかまれるわよ?” “ん~、口で言うのは難しいんだけど…。似てるんだよね。だからほっとけない。” 《誰に似てるの?》 そう聞いたら貴方はいつもの柔らかい笑みを浮かべながら、でも少し淋しそうな顔をした。 「もう届かない大切な人、かな。」 少し、ほんの少しだけ切なくなった。 私は彼自身が、好きだったから。 「…その人とは、どうなの?」 「…数年前、病気でね。呆気なく逝ったよ。」 「でも、今でも好きだな。」 「これ以上好きになる人はいないくらい。」 【差し伸べられた手】 (あの温かい手はもうない。) (振り払ったのも、消したのも私。)
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