ほほえむのなら。

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「こんな世界に飽き飽きしてるなら、 一緒に、飛ぼうよ」 第一印象は物静かな女性。 第一声は心中を告げるもの。 こんな世界にはもう未練も何もない。 僕は差し伸べられた手を静かにとった。 ぐんっと勢いよく引かれた体は一瞬空を翔る。 「…っぁ…」 あぁ、あの本最後まで読まなかったな。 そういえばあのドラマの最後はどうなるんだろう。 親はどう思うかな。悲しんでほしくないな。 アイツは泣くかな。泣かないでほしいな。いや、ちょっと泣いてほしいかも。ま、放っておいてもアイツなら笑うだろ。 彼女もほしかったな。 たくさんキスして、たくさん抱き締めて、お互いの身体の温かさを知って。 結婚して、 子どもは何人がいい? なんて話したり、 今日上司に叱られちゃったよ なんてくだらない話もしたかった。 産まれた子どもが男の子なら、休みにキャッチボールしたり、一緒に昼寝したり。 そうか。もう、できないんだ。 ナニモ、デキナイ。 「…だ… 死にたく、ないんだ…!!」 “死にたくない” そう気付いた時には 生と死の狭間が僕の目の前にぽっかりと口を開けていた。 【心中願望】 (まさか堕ちる間に気付くなんて。)
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