ほほえむのなら。

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“彼女が結婚する。” そう聞いたのはちょうど俺達の記念日だった。 結婚が決まった彼女は日々忙しそうに走り回り、 俺が好きだった長い髪も、 透き通るような白い肌も、 すべてが少しずつ痛んでいた。 そんなある日、俺は偶然にも彼女と二人きりになる時がきた。 「結婚、決めたんだってね」 『好き。大好き』 俺が声をかけると俯いた彼女は壊れたかのように好きだと繰り返す。 「ねぇ、なんで結婚決めたの?」 『好き。大好き』 俺が何を話しかけても好きとしか返ってこない。 「…ねぇ、壊れたの?」 『好き。大好き』 虚ろな目でこちらを見る彼女を見ていると目頭が熱くなった。 『好き。大好き』 「…俺は、愛してる」 【君らしくない言葉】 (それだけで気付いたよ。) (君はそんな事を言う人じゃなかった。) *望まない結婚、的な。*
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