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「ひかり…」
腕の中で今はすやすやと寝息を立てている少女
それは
彼が小さな時から大切に見守り、守り続けてきた少女
「んっ…」
「…起きたのかい?」
「…チェシャ…猫っ…っ私っ…私はっ…違うっ…」
目覚めた途端
顔を真っ青に染めながら暴れはじめたひかりに
チェシャ猫は暴れるひかりを強く抱きしめながら
何度も何度も優しく大丈夫だと言い聞かせていた
「違う…私は…私はっ!!!…」
「あぁ、わかっているよ…君は何もしてない…だから今は安心して眠るんだ。」
優しく目を覆い隠して落ち着かせると
ひかりはまた静かに寝息を立てはじめ
けれども彼女の瞳から溢れ出した涙をチェシャ猫は悲痛気な表情で見つめていた
「チェシャ猫」
「これはこれは女王陛下…城を出てお散歩ですか?」
突如背後からハイヒールの音と共に聞こえた声に
チェシャ猫は後ろを振り返ると声の主に深く頭を下げ
「ウサギから話は聞いた…ひかりは疲れて眠ってしまったようじゃの…」
可哀相に…
そう言って濡れた頬を撫でる女王にチェシャ猫の表情も次第と暗くなり
「おぬしが悩んでもどうしようも無いことじゃ…でもひかりは真実の歌の『全て』を聞いた訳ではない…そうじゃろ?」
「えぇ」
「ならば、ひかりはまた歩いてゆける…この子は強い子じゃからのっ」
フフフッと優しい笑みを浮かべて
ひかりの頭を撫でる女王の姿に初めは呆気にとられていた
チェシャ猫もそうですね…と
小さく、もけれども期待を含んだ声でそう呟いていた
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