『比翼の鳥』

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非道く、寒い。 寒風が震える身体から体温を奪っていく。 産まれた瞬間から。いや、産まれる以前から。 咎のように、罰のように不完全である事を定められたこの身。 それでも前へ、一歩でも前へ。 何故、孤独を感じるのだろう? 物心ついた時から自分は独りだった。 孤独を感じるのは、きっと独りでない時を、母の温もりを微かに、しかし確かに憶えているから。 傷だらけの身体が悲鳴を上げる。 それでも前へ、前へ。 一歩先、二歩先には望む景色があると信じて。 一歩、また一歩。 不意に視界が拓ける。 どこまでも拡がる天空。 だが、天空が傾き、やがて遠ざかる。 違う。 遠ざかっているのは自分だ。 落ちているのだ。 自分が、天空から遠ざかっているのだ。 諦念が心を占める。 身体に触れる物が空だけになる。 これこそが焦がれた感触。 天空に包まれる。   「羽撃たきなさい!!」   力強い声と共にぶつかる暖かな何か。 忘れて久しい他者の温もり。 知らず声に従い羽撃たく。 落下とは違う風に乗る心地良さ。 瞳を開く。 近付く空と見知らぬ笑み。笑みの主と同じ言葉を紡ぐ。   『やっと会えた』   空は最早彼等の物だった。
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