お兄ちゃん

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最初に会ったのは五歳の時。 私は母のいない父と一緒に、新しい母と会うことになった。 新しい母には二人の子供がいて、父は私に二人をこう紹介した。 ――この子たちが、新しいお兄ちゃんとお姉ちゃんだよ。 そう紹介されたお兄ちゃんは、笑顔を浮かべながら片手を上げて「よっ。」と挨拶し、お姉ちゃんはペコリとお辞儀をした。 慌てて私も挨拶をする。 「は、はじめまして!此木舞(このきまい)です!」 二人の兄と姉は優しかった。 だけど兄の方はちょっと意地悪だったのは覚えてる。 私を困らせるのが好きだったのか、いつも私にちょっかいを出してきた。 私が泣きそうになるといつも新しいお母さんがやって来て、キック(踵落とし)をしていた。 お母さんにはいつも決めゼリフがあって、 「ライジングキーック!!」 とか叫んでいた。 兄は、ぐはっ!と叫んで悶絶していたのを覚えてる。 それを見ていた私はちょっとかっこよかったと思ったのを覚えてる。 いつか私も決めゼリフを叫んでやろうと思った。 いま思うとどうしてそんなことを思ったのか理解出来ない。 だけど、兄は本当に私が意地悪をされていた時は身を体して守ってくれた。 私が泣いてると、兄は「大丈夫。俺がお前を守ってやるよ!」と言ってくれた。 その言葉が、嬉しかった。 ずっと守って欲しかった。 しかし、強さは中学を超えた時に、逆転してしまった。 私は“力”に目覚めてしまったからだ。 私の力の箇所は足。 素早く走ることや、高く飛ぶこと、そして蹴る強さが上がったのだ。
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