お兄ちゃん

4/6
前へ
/118ページ
次へ
夏休み……。 高校一年の楽しくなるはずだった姉の夏休みは、最悪の結果で終わってしまった。 意識不明。 真夜中の学校で姉は、私たちによって発見された。 それから姉は、感情というものが無くなっていた。 ただ、今という時を生かされているような人形に見えた。 それから兄はずっと姉さんにほとんどつきっきりになった。 休みは大抵病院に見舞いに出かける。 暇さえあれば、原因の究明をしようとしていた。 最も、すでに検討はついてたみたいだが。 たまに姉に対して物騒なことを呟いてもいたっけ。 結局、何も起こりはしなかったが。 私はというと、同じように兄と同じように究明に励んでいた。 と、いうのは建前にしか過ぎなかったのだが。 それから一年。 私は兄と同じ学校に進学した。 いや、なったというのが正しいのかな? なぜか、他の学校は全て落ちたのだ。 A判定を貰っていたところも、全て落とされた。 どちらにしろ、あの学校で良かったのだが、建前として受けたものが全て落ちたのだ。 はっきりいって愕然とした。 だが、両親は何も言わなかった。 仕方ないよ。 その言葉で済まされた。 普段なら、怒るはずなのに、両親は笑って言っていたのを覚えてる。 その態度に、無性に腹が立った。 だが、両親を蹴る訳にもいかない。 仕方ないので、兄を蹴った。 ぶふっ、と叫びながら吹っ飛ぶ兄。 私は軽く地面を蹴り、追撃を喰らわす。 五回くらい叩きこんだ気がする。 はぁ、はぁと肩で息をしながらボロボロの兄を見つめる。 その後、無性に悲しくなってきた。 その場で泣いた。 わんわんと。 まるで赤子か何かのように。 自分に対する苛立ちで泣いた。 そんな時、ポンと頭の上に何かが乗る感触。 兄の手だった。 兄は、優しく笑ってくれた。 それを見てますます泣いた。 兄は泣き止むまで頭を撫でてくれた。 その時、一瞬だけ、姉がいなくなったままならいいのにと、思った。 一瞬だけ……。 しかし…… 今思うと、よく兄は生きていたものだ。 あの人の生命力は茶色のあいつなみかもしれないとも思った気がした。
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加