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視界が真っ暗な中……何か焦げる臭いがした。
……そう、それはまるで肉の焦げる臭い。
焼きすぎて、焦げた臭い。
目を開ける。
視界に広がったのは、火の手が上がった村だった。
あちこちが焼けて、村全体に火が回っている。
その下には、白い鎧を着せられた人の姿。
口から血が溢れている。
その閉じた目は一生開かないと分かった。
「ああ……うう……。」
声が、上手く出せない。
その人の名前を叫びたいのに叫べない。
手に握られた光る刃が、ますます光を帯びていく。
「う……ああ……。」
どうして。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
悲しくて、悲しくて…………怒りが燃え上がる。
そうだ。
そんなことにした奴らがいるからじゃないか。
目を、前に向ける。
そこには、ニヤニヤと笑う赤い髪の少年と、寡黙な土色の髪をした大柄な男と、冷静にこちらを見る女。
そして……白髪のかつての親友がいた。
「が……ああ……。」
声が出せない。
僕は人間から少し離れてしまった。
人間であることを止めてしまった。
ここにいるのは、単なる獣。
復讐をするというだけの獣。
理性なんて、とっくに無くなっていた。
殺したい。
あいつを、八つ裂きにしたい。
あそこで事もなげにこちらを見ているあの白髪を、肉塊にしてやりたい。
その思いが、次第に心を覆いつくす。
それは、とても心地よいことだった。
なんだ……そんなことだったんだ。
唐突に、理解する。
最初から、こうしたかったんだ。
心は、ずっとそれを望んでいたんだ。
だから、望む通りにした。
走り出す。
両手に二つの刃を携えて。
かつての親友に向かって。
その時。
バサリと、何かが開く音がした――――。
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