第一部

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無我夢中に走っている内に気が付けば子供達の元に着いていた。子供達は僕の姿を認めると、駆け寄ってきた。 「ウィル……? どうしたの? 泣きそうな顔してるよ?」 マリアが心配して僕に声をかけてくれる。 彼女の不安を晴らすように、僕は笑顔を作る。 「もうすぐ、一緒に暮らせるようになるんだ……」 「ホント!?」 マリアを始め、フィリップ、アンディ、シモンが歓声を上げる。 「ご飯も毎日食べられるの?」 「ああ」 「そこにベッドはある? 寒くない?」 「あるよ、温かい毛布も、暖炉もある」 「おとなに虐められたりしない? 私達をぶったりしない?」 「ああ、ああ……」 涙が止められない。嗚咽が止められない。 僕はマリアの前に跪き、身体を預けた。 「どうしてウィルは泣くの……? 私達と一緒に住むの、嬉しくないの……?」 「ううん、嬉しいんだ……嬉しいんだよ……?」 声にならない声が彼女の疑問に答えを示す。 ――嬉しくって涙が出る事だって、この世界にはあるんだ。
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