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無我夢中に走っている内に気が付けば子供達の元に着いていた。子供達は僕の姿を認めると、駆け寄ってきた。
「ウィル……? どうしたの? 泣きそうな顔してるよ?」
マリアが心配して僕に声をかけてくれる。
彼女の不安を晴らすように、僕は笑顔を作る。
「もうすぐ、一緒に暮らせるようになるんだ……」
「ホント!?」
マリアを始め、フィリップ、アンディ、シモンが歓声を上げる。
「ご飯も毎日食べられるの?」
「ああ」
「そこにベッドはある? 寒くない?」
「あるよ、温かい毛布も、暖炉もある」
「おとなに虐められたりしない? 私達をぶったりしない?」
「ああ、ああ……」
涙が止められない。嗚咽が止められない。
僕はマリアの前に跪き、身体を預けた。
「どうしてウィルは泣くの……? 私達と一緒に住むの、嬉しくないの……?」
「ううん、嬉しいんだ……嬉しいんだよ……?」
声にならない声が彼女の疑問に答えを示す。
――嬉しくって涙が出る事だって、この世界にはあるんだ。
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