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当時わたしは17歳だった。
17歳というのはまったくやっかいな時期で、わたしたち(もちろん例外もいると思う。わからないけど)はクラスでひとりぼっちだとか、周囲に裏切られたとか、そんな簡単な理由で『死にたい』なんて言ってみたり、場合によっては死ぬことすら許されていた。
常にこころはゆらゆらと揺れ続けていた。ちょうど崖と崖のあいだに造られた、木製のつり橋のような。
わたしは、つり橋の真ん中あたりまでふらふらと歩いた。ふと、手すりにつかまって、真下をのぞいてみる。
少しだけ上半身を乗り出すと、そこには、どす黒い闇が広がっていた。それ以外、なにもない。
闇の前ではなにかが存在することすら、許されないのだ。
17歳のわたしには、木製のつり橋も、その下に広がる闇も、さほど怖くはなかった。
助かる、助からないの問題ではなく、ただ不安定なつり橋の上よりも、あそこにある闇のほうが居心地がいいかもしれない、と思った。すっぽりと、わたしを受け止めてくれそうな気がした。根拠は、もちろんない。
ここから落ちたら、どうなるの?
わたしは、ゆっくりと目を閉じた。そのときに、やっとわたしが涙していることに気付いた。そのまま上半身を前に傾ける。涙が、頬から離れた感覚があった。闇は、なにもいわずにわたしの涙を受け止めるだろう。もう、大丈夫よ。
手を離せ、このまま、手を離せ。そうすれば、すぐに終わるから――
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