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「高橋さん、これ 何につかうの?下手したら停学よ」 「ただ、持ってるだけです、人なんか刺しません」 「そういう問題じゃないの」 わたしはナイフを持った先生の手が少し震えていることに気が付いた。刃は柄の中にしまっておけるタイプなのだけれど、凶器を持っている時点で先生は、少なからず怖気づいていた。こういうものを、何気なく扱える人間ではないのだと、わたしは判断した。 「先生、そこの、丸いところ指で押してみて」 「‥‥ここ?」 ヒュッ 乾いた音がして、次の瞬間には柄からナイフの刃が飛び出していた。もちろん先生は驚いてそれを手放し、ナイフは軽快な音をたてて床に落ちた。わたしは席を立って、大きな目をさらに大きくして固まっている先生を尻目に、それを拾い上げる。 「進路については、もうちょっと待ってください」
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