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誰かが、わたしの口をふさいでいる。地面に押し倒されていたようだ。 相手は黒いパーカーのフードを深く被っていて、顔が見えない。 とりあえずこの場から逃れようとして、手を伸ばすが、それは無残にも相手の手によってはねのけられてしまった。 死ぬのだろうか。 強く地面に押さえつけられているようで、うしろ頭が痛い。ここは、どこだろう?たぶん、あの空き地だった気がする。死角で、ほとんど人は通らない場所だ。 何で、こんなに運が悪いのだろう。さすがに、恐怖を感じた。さっきまでわたしは闇を求めていたはずなのに。ああ、どうしよう。 相手がわたしのカーディガンを脱がそうとして乱暴に引っ張った。ボタンをとめていたから、なかなかカーディガンは相手のいう事を聞かないようだ。 しかしカーディガンの抵抗はむなしく終わった。相手は、わたしのものよりも一回り大きなバタフライナイフを持っていたのだ。 「静かにしてろ」 バタフライナイフをちらつかせながら、男の声がそう言った。 わたしは、ぎゅっと目を閉じた。だから、何が起こったのかが分からなかった。 ただ、目を開けると、男はわたしの上に覆い被さって、そのまま動かなくなっていた。怖くなって、急いで男の下から這い出した。そのせいで仰向けになった男の腹に、ナイフが突き立てられている。 男のバタフライナイフよりは一回り小さな、それはどうみてもわたしのフォールディングナイフだった。
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