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今日も、自称彼氏(何人かいるのだが)と食事を摂取するために、まちあわせのばしょへと歩いているところだった。
雪が降りそうなずっしりとした雲の下。
コートを着込み、マフラーをぎっしりと巻いて結び、ジーパンの裾をブーツにしっかり入れ、洋楽を音量大にして耳にイヤホンをつっこみ、集中していた。
寒くないように。
なのになぜ、いつもは通り過ぎていたその店に気付いたのか。
汚れた赤黒いちょうちんには「たこやき」「やきそば」と書いてあった。
たちどまり、見ると、屋台のような、倉庫のような、プレハブを改良したような店だった。
メニューをぼんやりみていると、「たこやき今できたよ!」とおばちゃんが話し掛けに来てしまう。
断れるタイミングでまごついてしまい、
「なら待つ?やきそばなら五分!!」
さらに威勢よく誘われる。
なんとなく「じゃあやきそばで。あとビールも。」と頼んでしまった。
じゃあ中入って!とプレハブの中に誘い入れられ、店内に入ると山盛りに古い座布団が乗った古い椅子がふたつ、ちいさなテーブルが狭そうに一つ。
これは屋台より悪い……きっと持ち帰り専門の店で、このスペースはおばちゃんが一息つくような、お客さんがすこし待ったりするようなとこなんだわ、と理解する。
それにしてもそこはおばちゃんの長年の取捨選択で作られており、
油くさい丸い石油ストーブはしゅんしゅんとお湯を沸かしていたし、
ちいさなテーブルには歪んだスポーツ新聞と、
マグカップに無造作に突っ込まれた花があった。
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