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ある日の夕方のことです。慧は、彼の鞄を奪った少年達を追いかけて土手に来ていました。
「返せよ、僕の鞄。返せって。」
慧がそうは言ったものの彼らが返すはずは無く。必然的に奪い合いになってしまいます。
「誰が返すかっ。ほらよっと。」
鞄を軽々と別な男の子に投げ渡す。そんなことをされているうちに慧は、怒りに我を忘れてしまいました。
「返せって言ってるだろ。このっ。」
慧は、一人の男の子を殴ってしまいました。それをきっかけに彼らは、慧を囲んで殴ったり、蹴ったりなどしてきました。多勢に無勢。慧には、成す術がありません。
「お前からやってきたんだからな。」
そんな暴力に必死に抗おうとした時です。
「なにやっているの、あなた達。」
凛とした声が辺りに響きました。彼らの視線の先にいたのは。
「姉・・ちゃん・・・?」
帰宅の途中であろう早羅がそこにいました。
「慧があなた達に何かしたの?」
「うるせーよ。どけよ。」
男の子が早羅を突き飛ばしました。
「きゃっ。」
早羅は、バランスを崩して地面に座り込んでしまいました。
「姉ちゃんに何してんだよ。」
慧が拳を振り上げた時です。
「おいっ、お前らそこで何をしている。」
大柄な中年の男がこちらに向かって歩いてきます。それを見て、一人が言います。
「やばい。逃げるぞ。」
その声で皆がいっせいに逃げていきます。
「姉ちゃん、大丈夫?」
慧が早羅の方に駆けて行きます。
「大丈夫。少し擦りむいただけだから。」
掌から血が滲んできていました。
「おい、大丈夫か?」
中年の男がこちらに走り寄って来て聞きました。それに慧が大丈夫と答えて、二人は、家路に着くために歩き始めました。
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