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「須川く…も、やめて…!痛い…」
溢れる涙を拭う事もできず私は懇願する。
そして、私は涙の向こうでぼやける須川君をただ見つめた。
「…はっ」
髪を掴む手が放された。
私はじんじんと痛む頭で何も考えられないまま、現状がわからずにいた。
「な、に…?須川君…」
背中にはコンクリート。
視界に映るのは、青い空が少しで、他に映るのは…須川君だけ。
「…お前さァ」
私を見下しながら呆れた声を出した。
「…勝手に決めつけんな」
一言そう言って、須川君は立ち上がる。
私もゆっくりと体を起こした。須川君はスタスタと屋上から出ていく。
「…賭け。しっかりやれよ」
ニヤリと笑いながら振り向くと、須川君は出ていった。
バタン、とドアが閉まる音を聞き、私は緊張の糸が切れて長い長い溜め息を吐く。流れっぱなしだった涙を拭う。
「やっぱ怖いぃぃ!!」
私の悲痛な叫びが屋上に空しく響いた…。
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