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き…きた…。
心臓がドクンドクンと音を立てる。
なんてだらしのない格好だろう。ボタンは第三まで開けてるし、ネクタイは汚く結んでいる。
ふざけて
『やだアナタ、ネクタイ結べてないわよ』
って言って結び直してやりたいくらいだ。
そんなこと恐ろしくてできないけどっ!
だって…
「よぉ、中崎」
「…お、おはよ、須川君」
恐いんだもん、この人!!
須川君は勢い良く椅子を行くと、ドカッと腰を下ろす。そんな何気無い動作にも驚いてしまう自分の情けなさに呆れてしまう。
「…今、何時間目だ?」
「えと、四時間目、だよ」
そう言えば、彼は教科書を出すこともなく、あっそと言って携帯をいじり始めた。
私は彼から視線を外すと、先刻返ってきたテストを眺めた。
「あぁ、今日はテスト返却だったな」
いつの間にか須川君が私の答案用紙を覗き込みそう呟いていた。
私は驚いてテストを隠す。
「なっ!勝手に見ないでよっ」
キッと睨み付けると、須川君は一瞬驚いた顔をして、すぐにニヤリと笑みを浮かべた。
「…中崎?一つ、賭けをしねぇか?」
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