ー『ゴミ溜め』ー

2/10
前へ
/64ページ
次へ
夜。 月も出ない、闇だけが広がっていた。 そんな夜。 1人の男が、荒い息遣いを夜気に撒き散らしながら、飢えた獣の様に、一心不乱に駆けていた。 「ハァ・・・ハァ・・・!!」 男は汗だくで、地を足で蹴り上げる。 見た目は、まだ若い青年。 だが。 目が血走しり、服には、赤黒い斑点が飛び散っている。 傍目からは『普通の通行人』には見えないだろう。 しかし、今の男には、そんな悠長な考えに浸れる程、余裕は無かった。 「ハァ!!!」 男は大きく息を吐き出し、今、自分が来た道のりを振り返る。 そこには、底無しの闇が広がっているばかりだ。 「・・・・・・」 男はしばらくその場で立ち尽くし、体が落ち着いた頃になってようやく、歩を進めた。 男は今まで、巨大な街の片隅に潜んでいた。 が、“不都合が”生じ、そこから出ていかなければならなかった。 男は街から離れ、何もない荒野を走り抜けた。 砂利でザラザラとした道。 砂埃がひどい場所。 そんな道だ。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加