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夜。
月も出ない、闇だけが広がっていた。
そんな夜。
1人の男が、荒い息遣いを夜気に撒き散らしながら、飢えた獣の様に、一心不乱に駆けていた。
「ハァ・・・ハァ・・・!!」
男は汗だくで、地を足で蹴り上げる。
見た目は、まだ若い青年。
だが。
目が血走しり、服には、赤黒い斑点が飛び散っている。
傍目からは『普通の通行人』には見えないだろう。
しかし、今の男には、そんな悠長な考えに浸れる程、余裕は無かった。
「ハァ!!!」
男は大きく息を吐き出し、今、自分が来た道のりを振り返る。
そこには、底無しの闇が広がっているばかりだ。
「・・・・・・」
男はしばらくその場で立ち尽くし、体が落ち着いた頃になってようやく、歩を進めた。
男は今まで、巨大な街の片隅に潜んでいた。
が、“不都合が”生じ、そこから出ていかなければならなかった。
男は街から離れ、何もない荒野を走り抜けた。
砂利でザラザラとした道。
砂埃がひどい場所。
そんな道だ。
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