ー『ゴミ溜め』ー

4/10
前へ
/64ページ
次へ
「・・・臭せェ」 男は思わず、鼻にシワを寄せた。 (何だよ・・・この匂いは・・・) 男はその香りが、自分の前方から流れてくる事に気が付いた。 「・・・・・・」 男の中で、好奇心が騒ぎ出す。 元々、そんな性質(タチ)なのだ。 気になったら、止められない。 確かめたくなった。 男は早足で、その香りを辿った。 道行く先、だんだんと異臭は強さを増した。 男は進むのに、手で鼻を覆わなければならなくなった。 ふと、気が付くと、道のあちこちにゴミが落ちているのが目に入った。 それも、歩く分だけ、量が・・・。 「何だぁ?」 男は足にまとわりついた汚れた紙袋を蹴飛ばし、眉をひそめる。 と、顔を上げた。 「・・・・・・」 言葉を失った。 男の視線の先には。 巨大なゴミの山があった。 車の古いタイヤ。 画面にヒビの入った、大型のテレビ。 あちこちが傷んで、配線が飛び出したコンポ。 その他にも、色々な物がうず高く積み上げられていた。 あらゆる生活用品の残骸、成れの果て。 ボロボロになり、汚れた物体。 それが、『異臭』の正体だった。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加