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ハンカチがひらり、横切ったので、拾う。
「落ちたで」
落とし主はまったく気付いとらんかったから、一瞬分からん顔をした。
(―――えぇ、)
「あぁ、ありが…………」
二人して固まってまう。
そこにあった顔は、お互いよう知っとる顔やった。
「………なんでこないなとこにおんねん、自分」
こないなとこ―――ラブホ街。
「……先生こそ、」
男連れて、何やってたん。――とは、言わんけど。
「……あんまり遅くまで出歩かんとき」
「怒らへんの?」
「怒りたいのはやまやまなんやけど、向こうで怖いお兄さんが睨んでんねん」
ラブホ街で男連れて、先生認めてどないすんねん。
先生は大きく溜め息をついた。なんや、開き直っとる。
「―――歩、」
怖いお兄さん(先生談)、が先生を呼んだので、先生は顔上げて。
「ほなな。――避妊はちゃんとせぇよ」
オレより背の低い先生は、なのにオレの頭撫でて、怖いお兄さんの隣へ歩いて行った。
その後、オレはいろいろと集中できんで。
彼女に最低っと怒鳴られてひっぱたかれて別れた。
オレは、その日、フリーになった。
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