その一

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四限目の終わりを告げるチャイムがなる。 立ち上がり、礼して、喧騒が始まるその一瞬。 「樋口千鶴くんは職員室にくるように」 まぁ、予想通りの呼び出しで。 クラスメイトが笑うのだけに、イラッときた。 この、目の前で煙草噛んでいる華奢な人は、出水 歩と言って。 「…国語の授業て眠くなりますよね」 「オレに喧嘩売ってんのかい、自分」 高校の国語教師(確か年は25)。 職員室から喫煙室へ移って、初めての会話が上や。 あぁ、はよ解放して欲しい。腹減ってんねん。 「先生、」 「彼女とはうまくいったか?」 話を切り出そうとしたら、先生が手に煙草を移して、ポツリと言うた。 「……ふられたわ」 「ありゃ、すまんなぁ。嫌なこと聞いたわ」 「……彼氏、ですか、あの人」 先生の目が、軽く開いた。言うとくけど、先生は男や。 華奢で整った顔しとるけど、オレと同じもんついとる。 先生は、じっとオレ見て、ふっ、て軽く、笑った。 「お友達と、あないなとこいかへん」 あっさり認めて、先生はまた、オレの頭をがしがしと撫でた。 まぁ、撫でるにしては荒っぽいけど。
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