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「見てしもたもんはしゃあないから、忘れろとは言わんけど、心に閉まっといて欲しいなぁ」
なんや、分からんけど、卑怯な言い方やなぁ、おもた。
せやから。
「……聞いてもえぇ?」
先生は苦笑いした。
「若いもんは好奇心旺盛やねぇ。えぇよ。なんや」
「なんで男の人やねん」
「そら、男の人が好きやから」
簡潔に言われて、戸惑った。
そんな直球に!
「気付いたらなぁ、お前が女の子見てムラムラ~、すんのが、先生は男やったん」
「……真性なんや……」
「はは、気持ち悪いか?」
先生は、いとも簡単に答え難いことを聞いてくる。
オレは軽く硬直して、首を振った。
趣味が違うのとおんなじやと思ったんや。
あれや、好みが違う。それだけ。
「…樋口はえぇ子やねぇ」
「嘘ちゃう」
「分かっとる」
ふと、先生の空気が柔らこうなったんが分かった。
無意識に緊張しとったらしい。
そらそうや、カミングアウトは怖い。
気持ち悪い言われたこともあるんやろう。
「…先生、かっこえぇね」
「なんやねん、藪から棒に」
「怖いことでも、ちゃんとぶつかるやん」
先生の形のいい眉がよった。
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