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その口が、
にたぁっと弧を描く。
「こんばんわ。いい天気だね」
そう言うと、男はゆっくりと雑誌をひっくりかえし、そっとそれを私に手渡す。
良い天気も何も夜なので何ともいえないし、どうやらこの人は『他の人』にも見えているらしい。
私はポカンとしたままその雑誌を受け取った。
《世界残酷物語**創刊号》
なんだコレは。
「君が話しかけてくれて良かった。僕は今その本を読んでいたんだけどね。道理でお話がめちゃくちゃだと思ったよ、あかずきんちゃんが猟師さんに助けられるんだもの。おかしいよね」
どちらかというとそれで正しいのだけど、一体さかさまからどういう読み方をしたらそうなったのか謎だ。
それ以前にさかさまに読んでいることに気付かない事の方がおかしい。
「君にあげるよ」
「え……?」
天井に頭がつかんばかりの翼男はやはりニタァっと笑ってみせる。
店の物であるのにあげるとはどういう事だろう。おごってくれるという事なのか……
どちらにしてもこんな変な雑誌は要らないし、知らない人に物を買って貰うような教育は受けていない。
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