†序章†

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特におどろおどろしい凶悪な顔ではない。 仕事帰りのOLのような顔だ。メイクもしている様に見える。 必死にしがみついている様子ではなく、この電車に外側から『同乗』しているように思った。 昔から私は少し変わった物を見る。 それが幽霊だったりしたら非常に助かったのだが、人の形という枠にはまらない……言葉通り奇妙な姿の生き物達だ。 それが本当に生き物なのか? と…言われると おそらくそれは『イエス』である。 始めは夢だと思った。 次に幻覚だと思った。 しかし、彼らは時に私に直接話しかけたり、接触したりして来る。 昔、二本足で走るネズミが残飯を抱えながら道路を横断してバイクにはねられた瞬間を目撃したりもした。 ネズミは見事に潰れたし、血も出ていたから『死んだ』のだと思う。 ではその屍体は? と聞かれると……とても説明しがたいのだが。 地面から生白い人間の手がはえて、屍体をさらい跡形もなく消えた…という結末だ。 この理由で私は彼らが幻か本物かに『おそらく』…をつけざるを得ない。
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