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だが、彼らが生きていると思う理由は他にもあって、誰1人として……
いや、私を除く他の人達が『彼ら』を見る事はないのに、他の人々もまた『彼ら』の影響を受けているという事だ。
実際、私にしか見えていないはずの『動く長靴』が、サラリーマンの背中を蹴り飛ばしたらサラリーマンは水飛沫をあげて目の前の川に落ちたし
満席のバスで立っている人も沢山いたのに、見えないはずの『血塗れの看護婦さん』が座った席だけは誰も座ろうとしなかった。
全てが私の幻覚で、何もかもが思い過ごしなのか…
ただ、みんなが見ないふりをしているのか…
それを解明するためだけに、私は今さら他の《宇宙人》達と会話をする気にはなれなかった。
生まれた星が違うのだから言葉が通じないのも、理解されないのも当たり前。
狂人扱いを受けるのはもうゴメンだ。
「ねぇ、アナタ」
窓の外からだというのにバッタ女の声は鮮明に耳に届いた。
私はバッタ女が視界に入らない様に沈んでいく山間の夕陽をみつめる。
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