†視覚†

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―――村上 瑠璃 《むらかみ るり》 染めた事のない黒髪は肩にかかるほどの長さで、中肉中背の何て事のない只の大学生。 甘いものはそれなりに好きだが、特に得意分野があるわけでもない。ちなみに進路もしっかり決まっていない。 母と父と弟がいるけど…今は大学の近くで一人暮らしなのでしばらく会っていなかった。 辺りはもうずいぶん暗い。 穏やかな夜が来たのだ。 人の行き交いは少なくなる…横道に入れば光さえない。 私は駅から徒歩5分の場所にあるコンビニに入った。 「いらっしゃいませー」 気のないご挨拶で迎えられ、私はお弁当の棚に直行した。 (あぁ…やっぱり唐揚げ弁当はもうない。) 隣りに塩鮭弁当が積まれているが……何とも添えてある煮物が気に入らなかった。 (肉が食べたかったのに…) 残念ながら私は料理をしない。 はじめの内は張り切って道具や食材を買い集めて何時間もかけて料理をしたが、結局おいしく出来たのはパスタだけだったし、……コンビニのご飯のほうがおいしいと思ってからは料理道具達が日の目を見る事はなかった。image=98408663.jpg
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