†視覚†

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しぶしぶ上の棚のおにぎりに手を延ばす。 ツナと梅、あとは新発売の飲み物…それからデザートのマロンケーキプリン。 コンビニ生活の出費は馬鹿にならないが、めんどくさがりは性分なので致し方ない。 (お菓子も買おう) そう思って雑誌コーナーの前を通り過ぎた。 (あれ……?) あれは『どっち』だろう。 雑誌コーナーの前に並ぶ背中… スーツの背中 スーツの背中 制服の背中……… そして 背の高い…凄まじく高い 細い細い………男? 真っ黒の服を着ている。 いわゆるゴシックスタイル…というのだろうか? 鎖やベルトなどのゴチャゴチャした装飾の多い服だ。しかも細長いシルクハットをかぶっている。 身長は…帽子を入れなくてもゆうに2mを超えていた。骨と皮だけかと錯覚する位に細く、体の半分以上が脚だ。 腕も指も長く、器用に雑誌を指先だけで掴んでいた。 (いやいや…どう考えても人間じゃないか。) 何故か雑誌を読むその猫背ぎみな背中に一瞬惑わされたが、こんな奇怪な体型の人間を見た事がない。    
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