†視覚†

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加えてコスプレか何かじゃない限り、背中に翼なんか背負わないだろう。 男の背中…というより腰の後ろからお情け程度のチープな黒い翼がちょこんと生えている。 私はどんな雑誌を読んでいるのか気になって、思わずその翼男の隣りに並んだ。 男は不動だ。 適当に雑誌を掴んでページを飾る芸能人に目を落とし、しばらく何気なくページを捲っていた。 ちらり………と、視線をあげる。 「あ……」 思わず声を出してしまった。 まずい、気味悪がられる…と、周囲を見渡すが。 みんな何事もなかったかのように雑誌を読みふけっている。 念のためレジの店員を見たが、せっせとDVDを並べていた。 (あれ…?聞こえてない…?) やはり人間なのか…。 いや今はそれ以上に気になる事がある。 「あの……雑誌、さかさまなんですけど…」 要らぬ事とはいえ、気になるものは気になる。 そう告げた途端、翼男は雑誌から目をあげてゆっくり私を見下ろし停止した。 シルクハットを深くかぶっているに加えて、濡れた様な漆黒前髪が鼻の下まである為に口しか見えない。  
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