Chapter.1 博士の記憶

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 その後も散々悩んだが、妻の後押しもあり施設に行くことにした。  青葉に連絡をすると、すぐに移動手段が手配され、施設までたどり着いた。移動時間から考えても、自宅からはかなり遠いようだ。そこまで私にこだわる理由は分からなかったが、気にしないことにした。考えても仕方のないことだ。  そこは思いの外小さな四階建ての建物で、中には青葉の他に三人の研究員がいた。予想より遥かに小規模だったため、私は肩透かしを食らった気分だった。  しかし、やはり研究自体は相当高水準で、それに見合った設備も整っていた。機械工学の研究室は二階にあり、三階には生物工学、四階は居住区となっていた。一階にはロビーの他に倉庫しかないようだ。  だが、生物工学の研究室まであるのは意外だった。これだけの設備がある中で、いったい何をしているのだろうか。これが終わった後で、少し覗かせてもらいたいと思った。  三人の研究員は、それぞれ名を瀬川、城戸、高宮と言い、瀬川と高宮は女性だった。四人とも意外なほど若く、皆二十代程度に見えた。
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