夏の夢

3/12
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
着替え終わって外に出ると、少し暗かった部室とは正反対の眩しい太陽が輝いていて、思わず目を細めた。 空を見上げると、濃い青の空に真っ白な入道雲が浮かんでいる。 少し遅れて出てきた咲季と二人で、暑い暑いと言いながら少し距離のある正門まで歩いていく。 咲季は電車通学だけど私は自転車通学だから、正門の近くにある自転車置場で別れた。 自転車に乗って道路を走っていると、少しだけ涼しい風が私の汗ばんだ首筋や額を撫でていく。 それでも、暑いものは暑い。 家に帰ったら真っ先にシャワーを浴びよう。 私はシャワーのことを考えながら、ひたすらペダルを漕いでいった。 家に着く頃には汗だくになっていて、Tシャツが肌にくっついて気持ち悪い。 さっさとこんなもの脱ぎ捨てて、シャワーを浴びよう。 自転車を車庫に入れると、玄関から家の中に入る。 「ただいま」 そう言いながら、靴を脱ぎ捨てていたら、リビングのドアが開き母が顔を出した。 「あら、おかえりなさい。早かったのね。部活じゃなかったの?」 リビングから流れ込んでくるクーラーの冷気が気持ちいい。 「今日は先生が急用ができたとかで、早めに解散になったんだ」 「珍しいこともあるのねぇ」 母はそれだけ言うと、またリビングの中に引っ込んでしまった。 大方、テレビのワイドショーでも見ているのだろう。 母は芸能人の不倫とか三角関係とかの話が好きで、特に、そういうものを見ながらお茶を飲むのが大好きだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!