夏の夢

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裏庭に行くと、ムクが私の足音を聞き付けていたらしく、しっぽを振りながら待っていた。 私は散歩用の紐をムクの首輪に付けると、散歩に出かけた。 昼間より涼しい風が吹いていて、気持ちがいい。 それはムクも同じなのか、テンポよく歩いている。 さっきまで机に座りっぱなしだったせいで、固まっていた体が少しずつ解れていく感じがする。 今日は部活が途中で終わったこともあり、そんなに疲れてはいない。 ムクと散歩をするのも久しぶりだし、少し遠出をしてみよう。 そう思い私は、小さい頃よく遊んでいた古い神社まで行ってみることにした。 その神社は家からそんなに遠くはないところにある。 決して立派でないが、木や草がたくさん生えていて、虫を捕まえたり、かくれんぼをして遊んだ。 久しぶりに通る懐かしい道に、楽しかった記憶を思い出して、自然と胸が高鳴った。 狭い脇道を通り抜けると、目の前に、ところどころ塗料のはげた鳥居が姿を現した。 その奥には、古ぼけた社がある。 「懐かしいなぁ」 思わずそう呟くと、吸い寄せられるように中に入っていく。 こんなに荒れ放題の神社なのに、以外にも境内はそれなり広い。 子供の頃はもっと広く感じていたが、それは今よりも小さかったからだろう。 うっそうと覆い茂っている木からは、蜩の声が聞こえてくる。 私は、蜩の、昼間に鳴いている蝉よりも少しおとなしめの鳴き声が好きだ。 目を閉じて、蜩達の合唱に耳を傾ける。 体中が蜩の鳴き声で満たされていくような感じがする。
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