夏の夢

7/12

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
蜩の声だけが響いていた中に、突然笑い声がした。 びっくりして慌てて目を開けると、何時の間に来たのか小さな子供が二人、楽しそうに戯れ合っている。 目を閉じる直前までは確かに誰もいなかったのに。 一体この子達はどこから来たんだろう? かくれんぼでもしていたのだろうか? ここは隠れる場所がたくさんあるから、かくれんぼには打って付けの場所だ。 たぶん、近所の子がかくれんぼをしていたのに、私が気が付かなかっただけなんだろう。 私はそう結論づけると、楽しそうにはしゃぐ二人を見た。 小学校低学年くらいの女の子と男の子の二人組だ。 こんなに年の離れた知り合いはいないはずなのに、私にはなぜかこの二人の顔に見覚えがあった。 私の家からそう遠くはない場所だから、どこかで見かけたんだろうとも思ったが、それとは違う気がする。 見覚えがあるだけでなく、なんだか懐かしい感じもしたからだ。 私はそう感じた理由を確かめようと、さらにこの二人を観察する。 二人は境内を手を繋いで走り回っている。 すると、男の子のほうがなにかに躓いてしまったのか、転んでしまった。 女の子も、繋いでいた手に突然かかった重みに耐え切れず、一緒に転んでしまう。 それを見て私は、慌てて駆け寄り、二人に声を掛ける。 「大丈夫?」 その声に反応して二人はそろって顔を上げた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加