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その泥だらけになってしまった二人の顔を見た瞬間、私は思わず声を上げそうになってしまった。
見覚えがあるはずだ。
その二人は、幼い頃の私と一つ年上の幼なじみのユウくんとそっくりの顔をしていた。
私が驚いてしまい動けずにいると、私のことなど気にも止めずに、女の子のほうが立ち上がった。
今にも泣きだしてしまいそうな顔をしながらも、必死に涙を堪えて男の子に声を掛ける。
「ユウくん、大丈夫?痛くない?」
ユウくんと呼ばれた男の子は、女の子とは対照的に、立ち上がるとにっこりと笑った。
「僕は大丈夫だよ。それより、ユイちゃんは大丈夫?」
そう言いながら、すまなそうな顔をして女の子のスカートに付いた泥を払っていく。
始めは一緒に泥を払っていた女の子だったが、耐え切れなくなったのか大声で泣きだしてしまった。
顔を泥だらけになってしまった手で拭うから、涙と泥とで顔はぐちゃぐちゃだ。
ここまでくる頃には私は確信していた。
この二人は、幼い頃の私とユウくんだ。
今、私の目の前で繰り広げられてるこの光景は、確か私が小学三年生でユウくんが四年生の頃にあった出来事だ。
少しずつ忘れていた思い出が蘇ってきて、目の前の光景と重なっていく。
それと同時に当時感じていたユウくんへの温かな気持ちも思い出されて、私の中に満ちていくのが感じられる。
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