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少しの間の後、我ながら間の抜けた事を考えるな、と苦笑してしまった。
人生最後の瞬間だと言うのにろくな事が思いつかない。
あーすれば、こーしとけば。なんて事ばかり出てくる。
こんな重苦しく疎ましい景色の中で後悔しながら死ぬなんて。
・・・そんなの嫌だ。
そうだ、もっと楽しい事を考えよう。
うん、それならやっぱり好きな人の事がいいかな。
きっとあの人は私をそんな風に思ってないだろうけど、私だって女の子だ。
好きな異性だっていてもおかしくはない。
まあ、貴方は鈍感だからお分かりにならないでしょうけど。
もう会えないと思うと悲しくなる。
でも、こんな風情も何も無い土砂降りを見ながら死ぬよりはマシ。
ゆっくり眼を閉じて、それから貴方を思い出す。
ああ、そう言えば貴方に出会った日もこんな雨の日でしたね。
あの日から私は貴方が世界の全てになりました。
一緒に居るだけで世界が輝いていました。
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