八月三日

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  帰ってこれて良かった   あいは心からそう思いながら兄の太もも辺りに頭を乗せ、抱きつくように腰に手を回した。 あいの髪から伝わる雨水が、光輝のズボンにじわりと広がった。 そんなことをしていると、急に強烈な眠気があいを襲った。 このまま寝てしまったら、兄が目覚めたときに驚いてしまうだろう とあいは身体を起こそうとした。 しかし それはそれで面白いな と思い直しそのまま身体を預けた。   あいは兄の感触を確かめるように、ぎゅうっと抱きしめると眼を閉じる。 心地よいまどろみを噛み締めるように、ゆっくり……実にゆっくりとあいは意識のスイッチを落としていく。  
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