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「み~んなあ~りがとぅ~」
泥酔している男はいまだ楽しそうだった。
そんな男に近付く白髪の男。
白髪の男は泥酔した男の肩を掴むと、ゆさゆさと揺らし声をかけた。
「お客さん、今日は終いだよ」
「んぁ…もう店じまいかい」
泥酔した男はのそりと起き上がると財布から千円札を四、五枚掴むと白髪の男に押し付けるように渡した。
「ここいい店だね、むぁた来るよマスター」
男はそう言うとふらふらとした足取りで店から出ていった。
それを見送ったマスターはドアの入り口にかけられたOPENと書かれた看板を反転させ、CLOSEと書かれた方を表に向け一言。
「またの御利用おまちしてます。」
キィと蝶番が擦れ、ドアの閉まる音が小さく鳴る。
その後は静寂だった。
一切の音も気配もありはしなかった。
そこにはただただ、深い深い静寂だけがあった。
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