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「じゃなー」
いつもの学校の帰り道、俺は友人達とファーストフード店によるのが癖というかなんというか。日課になっていた。
俺は友人たちにひらひらと手を振る。彼らは人ごみに飲み込まれていった。
「さてと・・・・」
俺も帰ろう、踵を返し人でごった返す大通りの中、隙間を縫うように歩いて行く。
時計を見ればもう午後五時半。すでに陽は傾き、道行く人々はみな夕焼け色に染まっていた。
今日の夕飯はなんだろうか、いや、間食してしまったから腹が減っているわけではないのだが。好物なら話は別だ。
余計なことを考えていたせいか、思いっきり通行人にぶつかってしまった。
「あ、すいませ――」
おかしい、急に腹が痛くなった。刺すような痛み。
不思議に思って俺は自分の腹に視線を落とした。
シャツにしみている不自然な赤色。滴る水滴。
激痛が走った。刺すような、ではなかった。
自分の腹をなでた。手のひらに鮮血がこびりついた。
「は?」
そう、俺は何者かに腹を刺された。いわゆる通り魔。
こうまでなって冷静な自分に少し驚きを感じるが、それはすぐに痛みによってかき消された。
「う、ぐぅう」
身体から力が抜ける。両膝が地面についたのがわかった。
そのまま地面に身体を横たえた。するとどうして、意識が遠のいていくのがわかった。
「き、きゃあぁぁぁぁぁあああ!!!」
誰かの悲鳴が聞こえる。
俺はゆっくりと息を吐きだした。
「・・・・・・・・」
目が覚めると、あたりは真っ暗で一瞬自分はなにか違う世界に来てしまったのではないかと錯覚した。
次第にぼやけた頭が目を覚ましていき、ここが病室だ、ということは理解できた。
「いっ、つうぅ」
上半身を起こそうとしたのだが、腹部が痛んだ。きっと刺された場所だろう。
時計に目をやれば、時刻は午前三時を回ったところであった。
ナースコールに手を伸ばすが、押すことはしなかった。
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