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ひどく寝苦しい朝だった。特に暑いわけでもない。むしろ残暑も抜け、秋に入り始めて心地よい涼しさがあるほどだった。 時計を見ると時刻は五時半。床に着いてから三時間ほどしか経っていない。しかし、妙に目が冴えていて二度寝できそうにもなかった。仕方がないので散歩でもして時間を潰すことにした。 自分の家からは適当な距離に広い公園がある。そこに行くために着替えようとするのだが、どうしても『動き方』が思い出せない。というよりも『歩き方』がよくわからない。右足、左足と足を出していくのだが、どうしてもたどたどしくなってしまう。散歩に行くことをやめてもよかったのだが、その時はその考えが思い浮かばなかった。 そうこうしているうちに公園着いた。だが、歩いてきた道程の記憶がない。どこを通ってどんな人とすれ違ったのか、どんな音を聞いたのすらも覚えていない。考えても仕方ないので公園内を歩き続ける。まだ、『歩き方』はぎこちない。ふと周りを見渡すと人っこ一人見当たらない。いつもはあんなに人がいるというのに…。奇妙な感覚に襲われながらも、なぜか心地よさを覚えた。まるで自分が世界でたった一人かのような………。
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