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ずっと、見せてこなかった内の自分。
もう二度と見せないと思っていた自分。
それに気づく者が目の前に現れた。
そのことに戸惑っていた。
「……ああ、あるだろうな。でも、今はもう誰も知る奴はいない」
過去に置いてきた。
もっと素直で、笑えていた自分。
「今の新崎さんは…きっと本当の姿じゃないんだよね。私、本当の新崎さんを見たいな」
嫌味でも、蔑みでもない優しい言葉だった。
綾女はこの時素直に笑みを浮かべ、
「ありがとう」
照れたようにそれだけを伝えた。
女の子は嬉しそうに笑う。
だが、すぐに表情が曇る。
「あ、あの…。私の話も聞いてくれますか?」
彼女の表情は辛そうに見える。
「ああ、いいよ。けど、その前にあんたの名前を教えてくれないか?」
綾女は彼女を拒むことはせず、座って話そうとベンチにかけるように促す。
2人は人目につきにくいベンチを選び、そこで話すことにした。
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