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「ゴメン、なんでもない」
「んだよ~! 昨日があんなのだから寝坊しちまってさ。ちゃんとセットしてないんだよ」
「オレも……。後ろに乗ってるやつが居なかったら始業式なんてサボろうと……」
そう言うと突然誠の腰を掴んでいた楓の握力が急上昇した。
「誠? その会話の流れだと、まるで昨日龍と遊んだよ~に聞こえるんだけど?」
「そ、そうか? 楓の勘違いじゃない?」
そう言いながらも誠の汗は止まらない。
埒【ラチ】が明かないと判断した楓の鋭い目つきが、わざとらしく口笛を吹きながら隣を並走している龍に向けられた。
「…………言え」
「な、なにをですか? 楓さん」
「死にたくないなら吐け」
「…………」
龍は誠に目で「耐えきれねぇよ!」と言った。
それを察した誠はブンブン首を振り、「絶対に言っちゃダメッ!」の意思を伝えたが……、
「誠、早く吐かないとあとが酷いわよ?」
楓のわざとキーを上げた優しい声に、
「……ごめんなさい」
恐怖を感じて、すんなり白旗を揚げてしまった。
それを聞いた楓の声が震えだした……。
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