第一章 隣のアイツ

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「ふ、ふ~ん……。アアア、アタシの料理の味見より不良ヤローをとるんだ、あああ、あんたは」 「えっ!? い、いや、断じて違う! 違うぞっ!」  誠は必死に首をブンブン横に振った。  実は昨日の夜、楓が自分の作った料理の味見をして欲しいと頼みにきたのだ。  楓は完璧ガールだけど唯一弱点があって、料理が出来ない。焼いたものは百パーセント焦がすし、味付けも個性的。いや、独創的かな?  ……まぁ、とりあえず不味い。食べたらガンで早死にしそうなほど焦げてるし……。  てなわけで、昨日は腹が痛いから早く寝るって言って上手い具合に回避してたんだけど……。 「わわわ、わかってるわよ? アタシだって。不味いんでしょ?」 「そそそ、そんなことないって! 個性的な味だなぁ~とは思うけど。なぁ、龍?」  龍はガクガク震えながら首を激しく上下に振った。  声の震えた楓は、地震よりも雷よりも当然火事よりも怖い。  しかも震えが料理絡みってことで二割増しだし、さらに嘘ついてまで逃げたってことで怒りが倍に増幅している……。  それで誠は思った。死ぬかなぁ、と。隣で合掌している龍もきっと同じ気持ちだろう。
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