3705人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふぇっ!? う、うん……。誠君はぁ……そのぉ……」
激しくどもる美琴に千夏が歩み寄った。
「ど、どうしたの、美琴? 顔真っ赤よ?」
「ななな、なんでもないよっ、ちーちゃんっ! ちょっとボーッとしちゃっただけ」
「ならいいけど……。って、あんた、いつまで隠れてんの?」
千夏の呆れた声に観念した楓は咳払いしながら美琴の後ろから姿を表した。やっぱりまたほんのり顔が赤い。
「別に隠れてなんかないわよっ! なんでアタシが隠れなきゃなんないのよ!? 悪いのは全部あいつなんだから!」
楓はギッと誠を睨みながら指を差した。
「わ、わるかったって! 勘弁してくれよ……」
「ヤダッ! 誠なんて知らないもん!」
子どもみたいに頬をプクッと膨らませながら楓は誠から顔を反らした。
が、ちらっと誠を見ると、ポソリと呟いた。
「でも、お昼にアタシの作った料理を食べてくれるなら……許してあげなくもない」
誠は頭を抱えた。
このまま楓と仲が悪くなるのを選ぶか、死ぬより辛い黒焦げ料理をがっつり食べるか。
……まさに苦渋の選択……。
最初のコメントを投稿しよう!