第一章 隣のアイツ

2/41
前へ
/222ページ
次へ
 ジリリリリリ――――  時刻は午前七時。春の温かな朝を引き裂くように、一つ目の目覚まし時計が部屋に響き渡った。  目覚ましで、無理矢理現実世界に呼び戻された男の子は、モソモソと布団の中でさやかな抵抗をした。  ジリリリリリ――――  二個目の目覚まし時計が鳴った。  しかし、少年は起き上がらない。耳を押さえながら、  春眠、暁を覚えず。  と、心のなかで連呼している。  昨日友達と最後の春休みを満喫しようという誘いに乗り、四時まで遊んでいたのだ。  ジリリリリリ――――  三つ目の目覚ましが鳴った。  それでも少年は起きない。  この目覚ましを耐えきれば、再び夢の世界に旅立てる! オレの眠りは何人たりとも邪魔させな…………。  少年が布団の中でモゾモゾしていると、怒りに任せたような乱暴な音と共に扉が開いた! 「『誠』ッ! 毎朝ウッサイのよっ! 今日から高二なんだから、目覚まし一個目で起きろぉおおお!」  三つの目覚まし時計をも超える大音量で、布団に潜る少年に向かって叫んだ。  誠と呼ばれた少年は、布団をちょこっと持ち上げて、うるさい声の主を確認した。
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3705人が本棚に入れています
本棚に追加