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楓は自転車の荷台に飛び乗って誠の腰辺りに手を添えた。それを合図と言わんばかりにゆっくりと自転車が進みだした。
自転車が緩やかな坂に差し当たったとき、ふと誠が声を漏らした。
「おまえさー、なんか勘違いしてないか?」
「えっ? なにぃ?」
しかし風を切る音のせいで楓は上手く聞き取れない。
誠は一瞬振り向く素振りを見せたが、思い止まってこめかみ辺りをポリポリと人差し指でかいた。
「オレさー、気付いちゃったんだよ。なにか一生懸命になってるとき、決まって楓が絡んでることにさ」
「……」
今度はしっかり聞こえたが楓はなにも言わなかった。
聞こえていることを知ってか、さらに誠は話し続けた。
「……だからさー、オレから離れんなよ。なんか寂しいじゃん、今までずっと一緒だったのに」
楓はギュッと誠のシャツを握り締めた。
このまま聞いてたら決意が揺らぐ……。それは……嫌だ。
楓は体全体の力を抜いた。倒れるように誠の背中に持たれかかる。
「……あんたやっぱりバカよ。今もでしょ? アタシは誠のお荷物でしかないのに、なんでそんなこと言うの?」
「お荷物? バカ言うな。こんな軽さでオレのお荷物になれるか!」
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