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「それだけじゃないわよ! 昨日だってアタシのせいで……」
「違うだろ? あれはオレへの逆恨みじゃん。楓はなんにも関係ないよ」
「うっ……、ま、まだまだたくさんあるわよ!」
「例えば?」
「例えばっ! 例えば……ダ、ダメねっ! たくさんありすぎて思いつかないわ!」
誠は大きくため息をついてグッとペダルを踏んだ。スピードがあがって風を切る音が大きくなった。
しかし背中に密着しているおかげで声はしっかり聞き取れる。
「なら、そばにいてくれよ……」
「でも……」
「楓はお荷物なんかじゃないって! お荷物は昔からオレだろ!?」
「違う! お荷物はアタシよ……」
すると突然キーっと甲高いブレーキの音を立てながら自転車の動きが止まった。
「うっせえなぁ! 違うって言ってんだろ! ききき、昨日からお荷物お荷物しつこいんだよ!」
「は? 昨日? 昨日って、あんたまさか! きゃあ!?」
楓が怒鳴った瞬間、再び自転車が進んだ。急に進んだせいで、自然に体が誠の背中に密着する。
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