第一章 隣のアイツ

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 運動神経は小学校から今まで、ず~っと“三”。まぁ、並かな。続けてることもこれといってなし。中学のとき無理矢理楓に始めさせられた空手も半年で挫折。  ……自分でも思うよ、『ダメ人間』だってさ。 「誠ォ! ホントに早くしてっ!」  下から暴力女の喉から生み出された大音量が家全体に轟く。  誠は超特大のため息をつき、叫んだ。 「わかってるよっ! たく、うぜぇ……」  誠はなにも入っていないよれよれの鞄を持って部屋を飛び出し、階段を滑り下りた。  そこに待ち構えていたのはやっぱり……、 「遅いっ!」  楓だ。こいつの名前は『城ヶ崎 楓 ジョウガサキ カエデ』。  オレの家の隣に住む女の子で、物心つく頃からず~っと一緒。しかも誕生日も一緒だし、幼稚園から今まで、ず~っと同じクラス。  でも、中身は全然違う……。運動神経バツグンだし、頭もメチャクチャいい。性格はこんなんだけど、黙ってればその……可愛いらしい。友達が言ってた。  楓に猛勉強させられて無理矢理ランクの高い高校を選ばされたオレの成績は、もう目も当てられない……。よく二年生になれたなぁと思うよ、ホント……。 「な、なに見てんのよ……?」
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