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ほほを少し赤らめながら、楓が言った。
どうやら回想している間、楓の顔を凝視してしまったらしい。
「あっ、ゴメン、なんでもねぇよ」
「も、もう……。って、早く行くわよっ! もう『沙紀』さんとっくに出てったよ! はい、パンッ!」
楓は誠の口に強引にトーストを突っ込み、パタパタと外に飛び出した。
誠はトーストをひとかじりしたあと、楓を追いかけて家を飛び出した。
あっ、ちなみに『沙紀』っていうのは、一個上のオレの姉ちゃん。詳細は……後でイヤってほどわかるから。
「だぁ~かぁ~らぁ~、なぁ~にボーっとしてんのよ!? そんなにアタシを遅刻させたいわけ?」
「わ、悪かったなぁ! だいたい、遅刻したくないならオレなんてほっとけばいいだろ!?」
「バ、バカッ! あんたをほっといたら、誰があんたの面倒みるのよ……。ホ、ホラッ、自転車! 遅れてるぶん、これで取り返してよね!」
楓はそう言うと、再びほほを桜の花びらのような、淡いピンク色に染めた。
誠は楓から自転車を受け取るとサドルにまたがり、荷台を楓に突き出した。
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