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「へいへい、行きますよ楓さん」
「わかってるわよっ! 遅刻したら、罰金だからねっ」
楓は自転車のかごの中に自分の鞄を突っ込むと荷台にちょこんと座った。
「罰金ってなんだよ!? あ~っもういいや! 行くぞ!」
誠は自転車をこぎ出した。
二人分の体重がきついみたいで、最初はゆっくり。
門を出たあとは、緩い下り坂になっていて、速く進める。
「誠っ! 気合い入れなさいよホラッ!」
背中をビシビシ叩きながら楓が言った。
「叩くなっ! オレは馬じゃねぇ!」
下り坂で速くなった二人を乗せた自転車はそのまま商店街を突っ切り、学校付近の魔の坂『羅生坂』に差し当たった。これを越えれば誠達の通う、『凜桐高校 リンドウコウコウ』に到着する。
「……来たな、羅生坂……」
すでに立ち漕ぎ体勢の誠が呟く。
去年一年間、毎日楓を後ろに乗せて上り続けた坂だ。この坂のことは良く熟知している。この坂に勝つには……、
「止まったら負けだ! うぉおおおお!」
「行け行けっ誠ぉ!」
必死にこぐ誠をちょっと真面目に応援する楓。
そして、いつの間にか大きくなった誠の背中のシャツをギュッと掴んだ。
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